『シンドローム』/佐藤哲也(ネタバレ注意)
好きな作家さんがお勧めしていたので読んでみた。
宇宙戦争が始まっているのに好きな子のことばかり考えている主人公、という事前情報で読み始めたが、想像以上で笑ってしまった。
主人公の性格の面倒臭さというか深く考えすぎる感じ、はたから見てると滑稽に思える。
でも恋愛してる時の思考なんてこんなもんだよな〜と思った。
未確認生物!宇宙人の侵攻!宇宙戦争!みたいなとんでもない状況の中で、メインストーリーはずっと”僕と久保田の距離”。
読み終えた後にパラパラっと始めから見返してみたけど、ああ、この場面は久保田と一緒にお昼を食べたところだ、とか、久保田にメールを送ったところだ、とか、
宇宙戦争のストーリーなんて全く関係なく、主人公の気持ちの変化や久保田との関係の変化で場面を追っていることに気づいた。
倒壊した校舎からやっとの思いで脱出できた!という場面は普通だったらストーリーの中で1番嬉しく清々しい場面のはずだ。
だけどこの話では脱出した場面が1番重々しく苦しい雰囲気だった。主人公が、久保田と平岩が付き合い始めたと思ったからだ。
これだけ非日常的なストーリーが展開されているのにメインストーリーは主人公の恋心、というのが本当に新鮮で面白かった。
この主人公の性格な思考の癖も、この面白さを引き出した1つの要因だと思う。
迷妄やカドリール、何度も出てきた言葉。
平岩のことを迷妄に取り憑かれている、と見下していたがこの物語全体で見たら、非常時に久保田のことしか考えられない主人公の方が異常で迷妄の虜になっている。