misato-2’s diary

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『シンドローム』/佐藤哲也(ネタバレ注意)

 

 

好きな作家さんがお勧めしていたので読んでみた。

宇宙戦争が始まっているのに好きな子のことばかり考えている主人公、という事前情報で読み始めたが、想像以上で笑ってしまった。

 

主人公の性格の面倒臭さというか深く考えすぎる感じ、はたから見てると滑稽に思える。

 

でも恋愛してる時の思考なんてこんなもんだよな〜と思った。

 

未確認生物!宇宙人の侵攻!宇宙戦争!みたいなとんでもない状況の中で、メインストーリーはずっと”僕と久保田の距離”。

 

読み終えた後にパラパラっと始めから見返してみたけど、ああ、この場面は久保田と一緒にお昼を食べたところだ、とか、久保田にメールを送ったところだ、とか、

宇宙戦争のストーリーなんて全く関係なく、主人公の気持ちの変化や久保田との関係の変化で場面を追っていることに気づいた。

 

倒壊した校舎からやっとの思いで脱出できた!という場面は普通だったらストーリーの中で1番嬉しく清々しい場面のはずだ。

だけどこの話では脱出した場面が1番重々しく苦しい雰囲気だった。主人公が、久保田と平岩が付き合い始めたと思ったからだ。

 

これだけ非日常的なストーリーが展開されているのにメインストーリーは主人公の恋心、というのが本当に新鮮で面白かった。

 

この主人公の性格な思考の癖も、この面白さを引き出した1つの要因だと思う。

 

迷妄やカドリール、何度も出てきた言葉。

 

平岩のことを迷妄に取り憑かれている、と見下していたがこの物語全体で見たら、非常時に久保田のことしか考えられない主人公の方が異常で迷妄の虜になっている。

『モテたい理由』/赤坂真理

 

時々、自分の性格の悪さのせいかクスッと笑ってしまうような本だった。

 

モテる、異性ウケ、男女の違い、ファッション、ライフスタイル、女の幸せ、成功ルート…

 

 

ファッション雑誌は服だけを紹介しているわけではない。

その裏に隠れた人々の憧れや理想、フェミニズムの移り変わりを写している。

 

”着せ替え劇場”は私も雑誌で見たことがあり、服というよりストーリーに憧れを抱くタイプの私は特にこのコーナーが好きだったが、この本での解説を読み、雑誌製作者の意図的か無意識的か分からない女性心理へのアプローチを思いきり受けていたのだと知って悔しかった笑

 

 

また、この本が書かれたのが2007年のことで、男女感やフェミニズムに関して現在とは少し感覚が違うところがあるが、おおよそ変わらないと感じた。

 

現在は、男女平等やLGBTが注目され女性らしさ男性らしさが薄まってきている側面もあるように思う。

 

女性として、男性としての本能的な欲求(承認、性的、モテたいとか男受けしたい玉の輿に乗りたい)が薄れた(隠された)ために、この本で書かれているような欲求や本音が見えづらくなっているのだろう。

 

しかし、これらの欲求は無くならない。およそ人の心に無意識的に残り続けているが、この社会風潮によって隠されることで本人でも気づいていない場合があるのだろう。

 

だからこの本を読んだとき、あぁたしかにこんな欲求欲望が自分の中にあるな、とそこで初めて気づかれされる場面もあった。決して綺麗な欲求ではないかもしれないが、こういうところが人間の”人間らしさ”なのだと思う。

 

今の時代、バッシングを受けそうな内容もあるが、この時代だからこそ人々に読んでほしいと思った。

 

昭和時代の男尊女卑のような考え方と何が違うかというと、この本に書かれている事はほとんど先入観や固定観念ではない事実ということだ。

 

絶対と言い切れるものばかりではないのだが、ああそういう感覚もあるよねと頷けてしまう。なかなか受け入れたくないような本音だ。

 

時代の男女観が変化していったときにまた読みたい。

『できない相談』/森絵都(ネタバレ注意)


前回のカラフルに引き続きまた森絵都さんの本。

これは意図した訳ではなくて、作者の名前は見ていなくて、なんとなく面白そうだな〜と思って買った本が森絵都さんだったという偶然!

読み終わった後に気づいて、わぁ〜!森絵都さんだったのか!ってなった。

 

日常の中のちょっとしたイヤ〜な場面がたくさん集まった短編集。

日常の一部というより、なんか日常の隙間って感じがした。

 

あるよねこういうの〜っていう対人での嫌な場面。

 

取り立てて議論するほどのことでは無いかもしれないけど、こういうことの積み重ねが対人関係においてめちゃくちゃ大事なんだよな、とか、なぜか人ってこういうこだわりあるよな、とか、正論だけどなんか好きになれない、みたいな、一言で表せないような微妙な立ち位置にいる嫌な事たち。

 

印象に残ったのは「満場一致が多すぎる」と「絆について」。

 

 

〇満場一致が多すぎる

矛盾。

あれを思い出した。正直者だけが渡れて嘘をついたら殺される橋の逸話。

死ぬためにこの橋を渡るって言った人を殺すべきか渡らせるべきか分からなかったっていう。

この逸話なんだっけ、って思って調べたけど出てこなかった。

なんのやつだっけ。もうちょいちゃんと調べてみよう。

知っている人いたら教えてください。

 

〇絆について

謝罪会見にしては堂々としていて、こういう人間私は好きではないけど、ここまでくると振り切っててもはや清々しいしエンターテイメントとして見れる。

(不倫に謝罪会見が必要なのか否かという点はここでは考えない)

 

「セックス以上の関係」の例がたくさん出てきたけど、私の価値観では、え?!そんなのもセックス以上になるんですかい?!と。

 

体の浮気と心の浮気を分けて考える人の感覚だとこうなのかな、と思った。

 

どこからが浮気か議論とかあるけど、人によってセックスの価値も結構違うから結論が出ないのかな、と。

 

『カラフル』森絵都 読書感想文(ネタバレ注意)

 

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確か中学生くらいの時に読んだ本。死ぬほど読みやすくて面白くて感激した覚えがある。

黄色い表紙にシンプルなタイトル、これも記憶に残っていた。

 

本屋さんや図書館で見かけるたびに「あ、カラフルだ!」となにか嬉しくなりつい手に取ってみてまう。コンパクトな文庫本サイズを見つけたので即購入。

 

○自殺

どれくらい理由があれば自殺ってしてもいいんだろう?

と、たまに考える。

 

私は絶対的に自殺NG派だし、みんな生きてくれ!!と心から思うが、自殺した人の心境を考えたり自殺の経緯をニュースなどで見るたびに、どれくらいの理由と動機があれば自殺したことを納得されるのかな、と思ってしまう。

 

繰り返し言うが、自殺と言う行為自体、認めて良いものではないと思う。

しかし、「その程度のことで自殺したの!?」と「自殺したくなるのも分かるよ…辛かったね…」の境界線がどこかにあると思うのだ。

 

自殺に対する外野の納得感みたいなものが。

(そもそも自殺という行為を選択したこと自体、本人の主観で完結している話なのだから、こういう外野の好き勝手な意見は好きではないが。)

 

あとは、自殺した人の職種とか肩書きとか、そういうのでも外野の納得感は変わってくる気がする。サラリーマンが自殺するのと小説家が自殺するのでは、後者の方が何となく納得感が強い気がする。

 

真の場合は、母の不倫や父の本性を知ったこと、初恋相手の売春など、色々なことが重なって自殺した。

この動機に納得するかどうかは人それぞれだろう。

 

自分で望んでもないのに始まってしまったものを、自分で終わらせる人というのはまあいるだろうな、とも思ってしまう。

うっかり画面をタップしてしまったがために再生が始まった動画を止めるのと同じように。

動画を流し続けるとしたら、その動画が思いのほか面白かった、という場合だけだろう。

 

自殺をする人がマイノリティなのは、「人生一度きり」でやり直しが効かないからに他ならないだろう。

普通の広告より「この広告は一度しか流れません!」って広告の方が最後まで視聴される確率が高いのと一緒だ。

 

 

○真

主人公は物語後半で母や兄の気持ちや、父を誤解していたことに気づき、真は早まった、真が知るべき事実だった、と感じるが、こう感じているのが他でもない真の魂自身、というのが良い。

 

家族や周りの人への解像度が上がっていくにつれて魂が真の形を思い出して真になっていくような感じ。

読んでいる私も真になっていく。

 

 

○ひろかの魅力

真の好きな人、ひろかは子どもらしさと色気を両立させている恐ろしい女…

 

シンプルでカラッとした考え方、振り切っている感じが魅力なんだろうな、と思う。

隠しているわけでも恥じているわけでもなく、全てがひろかの素何だな、とわかるところがひろかの魅力。

 

素を出せる人間というのはどんな風でも魅力的に見えてしまう。

私は隠してばかりだから尚更。

ひろかみたいな女になりたいとは思わないけど、ある種逞しくてかっこいいと思う。

 

 

○本編からあとがきに入る瞬間

本編が終わって、後書きに入る時の切なさといったら言葉では表しようのないほどだ。

 

今まで没入していた素敵な世界がフィクションだったのだと知らしめられる、あの瞬間は本当に辛くて、同時にそれまで読んでいた物語がどうしようもないくらいキラキラして見える。

 

一つの作品として存在しているのだな、と改めて知るあの瞬間、私は嫌いじゃない。

ただ、その物語が喜劇でも悲劇でも、この瞬間だけは少し泣きそうになる。

『君の膵臓をたべたい』/住野よる 読書感想文ネタバレあり!!


母に借りて読んだ。

今読み終わったんだけども、ドキドキしてしまって感想がまとまらない。

有名な作品は、有名たる所以があるんだな、と改めて思った。

名作と呼ばれるものを鑑賞した後はいつも思う。

 

 

まず、桜良が通り魔に刺されて亡くなる、という驚きの展開が気持ち良かった。

余命幾ばくも無い少女が病気で亡くなって「神様は不公平だ」と嘆くより、通り魔に刺されて「救いようの無い結末だが人は皆平等だ」と言う方がなんとなくスッキリする。

 

胸に刃物が刺さっていたと言う文が目に入った時、驚きとショックで鳥肌が止まらなかった。

主人公の気持ち、桜良の気持ちを考えてしまってカフェで泣くのを堪えるのに必死だった。

家だったら一度本を閉じて10分くらいわんわん泣いていたかもしれない。

それくらい衝撃的だった。

 

主人公の名前の表現がとても面白かった。

映画化もされているようだけど、この部分をどうやって表現しているのか気になる。

主人公と桜良は間反対の性格だったが、どちらもとっても魅力的な人間。

どちらにも憧れる。

 

考え方もなにもかも真逆の2人が、最後は同じ思考を経て「君の膵臓を食べたい」という一文に辿り着いた。

 

まだドキドキしている。

面白かった。

『ケーキの切れない非行少年たち』/宮口幸治 読書感想文


言わずと知れた名書だが、タイトル以外何も知らず読んでみた。

 

驚いたのは、私の専門分野(幼〜少の教育)とかなり被っていたこと。

大学の授業で学んだ、WAISやらWISCやらも出てきて、おっ!と思った。

ただ授業内では”日本の教育の中で活用されている効果的なテスト”といったニュアンスで紹介されていたが、ここでは”実際に少年たちの問題を洗い出すにはザルだ”と書かれていた。

 

私が大学で学んだことはあくまでも「現在の日本の教育」であり、現在進行形で行っている教育方法でしかないのだなと感じた。

授業内で現在の教育の課題や問題点について提起されることも多々あったが、WAISやWISCに関してはそのような説明はなかったように記憶している。

 

一般的に問題視されていないことでも専門家からすれば多くの問題や改善点があることは、大学での専門的な学びを経て実感していたが、その学びですらこの本の著者(専門家)からすればまだまだ追求が必要なものなのだと気づいた。

 

 この本を読む前は犯罪者心理のような内容なのだろうと考えていたが、全く逆だった。

”犯罪者”の心理を解き明かすのではなく、ごく普通の少年たちが”犯罪者”となってしまう経緯を解き明かす内容だったのだ。

少年たちは初めから犯罪者だったのではなく、むしろ被害者とも感じてしまうような境遇にいた。

彼らは少年院に収容されるきっかけとなった事案に関しては加害者だが、その背景を見るとむしろ被害者だった。

”ザル検査”では見つけられなかったグレーゾーンの知的障害・発達障害に悩み、適切な支援を受けることができなかった。

 

事案の加害者は少年本人だが、少年の人生の加害者は、少年を適切に支援できなかった大人ではないのか?

 

盲目の人に点字が与えられるように、近視の人がメガネをかけるように、グレーゾーンの少年にも適切な支援を提供できていたら彼の人生はこんなにもハードモードじゃなかったはずだ。
 

・LDの児童

当書で紹介されていた、少年たちに共通する(多くみられる)特徴として、LD(学習障害)などがあげられていた。

私が大学の実習で支援したDくんと重なった。

LDということに加え、その他の特徴がいくつも当てはまった。担任の先生はとても良い先生で、D君は適切な支援を受けられている、と感じたが、この先はどうだろうか。

今後の彼の環境がより良いものでありますように…。

そして、彼の支援を行った1年間、果たして私は彼にとって適切な支援を行えていただろうか?

私にとっては”体験学習”だったが彼にとっては、彼の人生の本番だ。

今になって責任の重さをずっしりと肩に感じた。

彼が幸せな人生を送りますように。

 

 

 

・グレーゾーン

知的障害や発達障害については近年”グレーゾーン”という言葉が一般的にも浸透してきたが、まだまだ支援方法や理解が不十分なのだな、と感じた。

ただ、何万人にも読まれているベストセラーの内容がこれなのか、と嬉しくなった。

何万人もの人が発達障害やグレーゾーンについて知っている。

それだけでもこの本の功績は莫大なものだと思う。(⇦偉そうでごめんなさい)

『僕は勉強ができない』/山田詠美 読書感想文


友達ががオススメしてくれた本。

 

主人公の秀美がかっこいい。こんな高校生、現実にいるんだろうか。。17歳…?

 

思春期の自分や周りのことや大人のことさえも俯瞰で見ているような大人びたところがあるのに、ああやっぱり高校生だ、と思わせるような思春期っぽさや可愛さもあるとっても魅力的な主人公だった。

 

 

半分ほど読み進めたところで、おや…?なんか記憶にある描写だな、どっかで見たことのある文章だな、という部分が増えていって、秀美が山野さんに告白される場面で確信した。

 

私、この本よんだことある…。

 

なんでここまで気づかなかったんだろう?!不思議!!!

 

後半の祖父が病院のベッドで寝ているシーンや母親が奥村先生と飲みにいくシーン、めちゃくちゃ覚えている。

 

なんで前半で気がつかなかったのか謎。

 

しかし「この本読んだことある!」と確信した山野さんの告白シーンはやっぱりとても印象的で、紫陽花の花との対比表現もはっきり覚えていた。

 

何より私は”綺麗な人”の細かい描写が大好きなので、それで印象づいていたのかもしれない。

以前読んだ時もこのシーンは何度か読み返した記憶がある。

 

山野さんの無敵美少女感大好きだ。表では清純派美少女を演じて陰で努力してる腹黒くてあざとい女の子、素敵。

 

“表では完璧”を貫いているのが良い。見習いたい。

 

いつどこでこの本を読んだのかは全く覚えていないけど、大人になった今もう一度この本に出会えて良かったな。

 

薦めてくれたMちゃん、ありがとう!!