『ケーキの切れない非行少年たち』/宮口幸治 読書感想文
言わずと知れた名書だが、タイトル以外何も知らず読んでみた。
驚いたのは、私の専門分野(幼〜少の教育)とかなり被っていたこと。
大学の授業で学んだ、WAISやらWISCやらも出てきて、おっ!と思った。
ただ授業内では”日本の教育の中で活用されている効果的なテスト”といったニュアンスで紹介されていたが、ここでは”実際に少年たちの問題を洗い出すにはザルだ”と書かれていた。
私が大学で学んだことはあくまでも「現在の日本の教育」であり、現在進行形で行っている教育方法でしかないのだなと感じた。
授業内で現在の教育の課題や問題点について提起されることも多々あったが、WAISやWISCに関してはそのような説明はなかったように記憶している。
一般的に問題視されていないことでも専門家からすれば多くの問題や改善点があることは、大学での専門的な学びを経て実感していたが、その学びですらこの本の著者(専門家)からすればまだまだ追求が必要なものなのだと気づいた。
この本を読む前は犯罪者心理のような内容なのだろうと考えていたが、全く逆だった。
”犯罪者”の心理を解き明かすのではなく、ごく普通の少年たちが”犯罪者”となってしまう経緯を解き明かす内容だったのだ。
少年たちは初めから犯罪者だったのではなく、むしろ被害者とも感じてしまうような境遇にいた。
彼らは少年院に収容されるきっかけとなった事案に関しては加害者だが、その背景を見るとむしろ被害者だった。
”ザル検査”では見つけられなかったグレーゾーンの知的障害・発達障害に悩み、適切な支援を受けることができなかった。
事案の加害者は少年本人だが、少年の人生の加害者は、少年を適切に支援できなかった大人ではないのか?
・LDの児童
当書で紹介されていた、少年たちに共通する(多くみられる)特徴として、LD(学習障害)などがあげられていた。
私が大学の実習で支援したDくんと重なった。
LDということに加え、その他の特徴がいくつも当てはまった。担任の先生はとても良い先生で、D君は適切な支援を受けられている、と感じたが、この先はどうだろうか。
今後の彼の環境がより良いものでありますように…。
そして、彼の支援を行った1年間、果たして私は彼にとって適切な支援を行えていただろうか?
私にとっては”体験学習”だったが彼にとっては、彼の人生の本番だ。
今になって責任の重さをずっしりと肩に感じた。
彼が幸せな人生を送りますように。